2022.9.9

完全解説!!フラットベンチプレスと大胸筋中部の教科書

benchpless

目次

  • ベンチの角度で変わる鍛えられる筋肉
  • フラットベンチプレスで大胸筋中部が主に鍛えられる理由
  • 上部と下部でも肩関節の水平内転ができる理由
  • コンセントリック時の動きが安定しない理由
  • まとめ

### ベンチの角度で変わる鍛えられる筋肉

インクラインだと大胸筋上部。デクラインにすれば下部。フラットベンチは中部。 とりあえずそうやって覚えているパーソナルトレーナーは、この記事を読むことで、「なぜ」を解消し、なんとなくが無くなるはずです。

解剖学を理解することは、トレーニングへの習熟度を上げることになります。

顧客を指導する時に使う言葉や説明のわかりやすさが、大きく変わるでしょう。


### フラットベンチプレスで大胸筋中部が鍛えられる理由 フラットのベンチでベンチプレスを行うと大胸筋が鍛えられます。

その前に、大胸筋の部位別の働きをおさらいしておきましょう。

※大胸筋に明確に上・中・下と分かれているわけではなく放射状に広がっています。筋の起始部が異なることで様々な働きをします。

まず、大胸筋の中部の主な働きは”肩関節の水平内転”です。

フラットのベンチプレスは肩関節の水平内転の動作です。 ラックアップしたバーベルの位置は肩関節の鉛直上から、左右の上腕骨の大結節を結ぶ線上に下ろし、また肩関節の鉛直上に押し上げます。

こうすることで、若干の肩関節の屈曲が動作に入るものの、ベンチプレスはほとんど”肩関節の水平内転”メインの動作で行う種目だということがわかります。

解剖学上で見ても、大胸筋の中部の筋線維が走る位置の上にバーベルを下ろすことがわかります。 筋線維は最短距離で走行する部分が最も活発に働きます。 ですので、フラットのベンチプレスで最も使う(鍛えられる)部分は大胸筋中部になります。 一番使うということは一番鍛えていることと同じです。結果、フラットのベンチプレスは大胸筋中部に大きな刺激を与えることができます。つまり効いています


### 上部と下部でも肩関節の水平内転ができる理由

もちろん、バーベルに沿って筋線維が走っていなくとも、大胸筋の上部と下部も動作をおこなっているため、フラットのベンチプレスでも同時に鍛えることができます。

上記の図からわかる通り、肩関節の水平内転時、一番効率よく動員される筋が、大胸筋中部であり、上部と下部はあくまで、やや非効率に動員されています。

上記の図、オレンジ矢印が示している収縮の方向を肩関節の水平内転と考えるとわかりやすいです。

左右の人々は同じ力でロープを引いています。 しかし荷物はどちらかの左右に引っ張られるのではなく、真上に上がります。

この理屈はフラットのベンチプレスに当てはめることができます。

ベンチプレスの主な動きは(上部・中部・下部を全て違う筋と捉えると)大胸筋中部がメインに行う肩関節の水平内転です。 協働的に大胸筋の上部・下部が使われます。

大胸筋の上部・中部・下部全てを動員し、かつ高重量を扱えることから『ベンチプレス』が大胸筋を鍛えるメジャーな種目と言われています。


## コンセントリック時の動きが安定しない理由

ベンチプレスのエキセントリック時にバランスを崩し、首や腹部にバーベルを落としそうになった経験はトレーニーなら少なからずあると思います。

これは、動作自体に慣れていないことや、不安定な環境(ベンチ台がやわらかすぎるなど)など様々ありますが、上部(三角筋前部)と下部の筋出力バランスが釣り合っていない状態とも考えられます。

上部の出力が強ければ肩関節の屈曲が強くなり、首の方向へ。 下部の出力が強ければ肩関節の内転の動きが強くなり、腹部へバーベルが移動してしまいます。

特に挙上重量ギリギリの局面では筋出力が安定せずバランスを崩してしまうわけです。


## ベンチプレスは万能種目なのか

では、大胸筋上部と下部のトレーニングもベンチプレスだけでいいのか。 答えは▲です。 ✖️ではない理由は先述した理由と同じです。

フラットのベンチプレス時でも大胸筋上部と下部の筋収縮方向はそれぞれ肩関節の屈曲と内転です。

やはり、上部を鍛えるのであれば肩関節を屈曲メイン動作に、下部を鍛えるのであれば肩関節の内転がメインの種目を行う必要があります。 その時に行うバーベル種目はインクラインベンチプレスデクラインベンチプレスです。

この2種目の解説は後日解説します。



船谷 健太(Funatani kenta) 1997年、岐阜県で生まれる。 4歳から22歳までサッカーを、15歳から現在に至るまで筋力トレーニングに励む。

パーソナルトレーナーの経験を積むうちに「もっと多くの方に健康の知識を普及させたい」と思い、誰もが身近な人の健康を支えられる社会をつくる会社、トレーナーシップを起業。 パーソナルジム経営やフリーランスのトレーナーとして大手ジムで活動。 正しい健康の知識をより多く伝えるため、パーソナルトレーナー育成の指導にも注力している。

トレーナーシップHPはこちら http://trainership.jp/improve